2013年10月20日

元 「読奨生」 の西の空  『鳥かごの詩』 ― 10

やくざに勧誘されかかる

 大学も3年になると、出なければならない授業も少なくなってくる。

 夜遅く寝て朝早く起きているので、朝飯を食って部屋に戻って新聞を読んでいたりすると、眠たくなってくる。「大学に行く前にちょっとだけ寝よう」 と寝てしまうと、目が覚めるのが昼過ぎだったり、疲れが溜まっているときなどは、目が覚めたときには、もう夕刊直前だったりすることもよくあった。

 ♪♪ 昼寝をすれば 夜中に眠れないのは どういうわけだ〜〜♪♪

 朝から夕刊直前まで寝てしまうと、やっぱり夜は眠れない。本を読んだり勉強(一応)をしたりしていると、夜中の時頃には小腹がすいてくる。

 私が住んでいた部屋から軒ほど隣に、朝まで開いている喫茶店兼スナックバーがあった。小腹がすくと、ときどき、この店に焼きうどんを食いに出かけた。

 ちなみに、焼きうどんは小倉が発祥の地らしい。

 このスナックバーの経営者がやくざと知り合いだったのか、いかにもその筋の人というような人たちが、夜から明け方にかけて入っていた。

 あるときなど、客と経営者 (マスター) が言い合いになり、マスターがアイスピックを手に持って客を店の外まで追いかけて行ったこともあった。

 ある夜、いつものように夜の2時頃に焼きうどんを食べに行った。

 いつものテーブルに一人座って本を読みながら食べていると、テーブルの向かいに人が座ったのが分かった。私が「はい?」という感じで顔を上げると、30歳くらいの、見るからにその筋の人と思える人に、「兄さんは学生か?」と言われた。「そうですけど」と答えながらその人の手を見ると、小指が途中から欠けていた。

 小指が途中から欠けた人にこれほど接近されたことがなかったので、やはりビビった。その人に「どや? 大学は楽しいか?」などを聞かれて、当たり障りのない返事をしていると、「なぁ、兄さん、やくざにならんかね」と言われた。

 「いやぁ、まだ単位も残っちょるし」などと答えながら、質問をはぐらかしたりしていたが、そのうち、

 「うん、兄さんは目がやさしいけ、やくざにはなれんの

と言って、その筋の人は、私を解放してくれた。

posted by 赤井田拓弥 at 14:30| Comment(0) | 鳥かごの詩
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