2011年11月24日

『小林克也のアメリ缶』のこと


 今日、インターネットの検索で 『小林克也のアメリ缶』 にたまたまヒットし、懐かしく思いましたので、そのことを。

 この教材は20数年前に大ヒットしました。年齢が30歳半ば当たりから上の方には覚えていらっしゃる人も多いことでしょう。


 実は、あれ、私が制作しました。


 独立してすぐの頃でした。1987年です。以前に勤めていた会社の社長に相談されたのでした。

 どのような構成と仕組みにするかを、当時いっしょに仕事をしていた録音の技術者の人に相談しまして。

 残念ながら、その技術者の人は10年くらい前に亡くなってしまいましたけど。私が知っている音声に関することは、すべてその人に教えてもらったものです。

 当時ラップ英語みたいなのが流行っていましたし、小林克也氏が音楽にも関係がありましたので、バックにトントントンというリズムを刻む音を軽く入れてみようとなり、小林さんに相談したら「それはいい」ということになりました。

 録音スタジオで、そのリズム音を流しながら小林さんにラップのようなノリで英語をしゃべってもらうわけです。

 最初は NG が出ると、テープを巻き戻して小林さんにやり直してもらっていましたが、それをやると小林さんの時間を食ってしまうことになり、忙しい小林さんに迷惑がかかるからと、それで、NG になっても、そのまま続けてもらい、あとで音声編集することにしたのでした。

 これが、あとあと大変なことになるとは。

 最後の何日かはスタジオに泊まり込みでした。まだ出来上がっていないのに新聞や雑誌に広告が出始めたのです。
 「非常な人気のため、お届けするまでに時間がかかってしまうことがあります」というような文言付きで。

 実は、まだできていなかったのですが。

 それで、制作中のみんなと、「電話しようか。3日ほどでアメリカに赴任になるので、どうしてもほしい。御社まで取りに行きますので、売ってほしいって言って」などと冗談を言ったりしたものです。

 ですから、最後の1週間ほどは、スタジオから一歩も外に出ず、食事もすべて出前でした。外は晴れているのか、雨なのかすら分からずに。

 編集が終わって外に出たときは、なんか変な気分でしたね。



 テープの編集では、NG 部分をカットしてテープをつなぐのですが、当時はオープンテープをスプライスして編集します。トントントンというリズムの長さに合わせてスプライスするので、非常に神経を使いました。

 できあがり1分のテープを編集するのに3時間くらいかかることもありました。


 テープをスプライスして編集し、あとでテープを回して聞き直します。そして、短すぎればノンモンテープを0.0何秒単位で継ぎ足し、長ければ、テープを何ミリ単位で切ってスプライスし直しです。

 そして、トントントンというリズムが一定になるように作っていくわけです。短ければ「こりゃ、短けぇ」と思い、長いと「うわっ、こりゃ長いわ」と。


 そして、スタジオから解放されたあとのこと。


 交差点で信号が変わるのを待っていると、目の前を車が行き交います。

 車間距離が一定だと「すっ、すっ、すっ」と一定のリズムで違和感を感じないのですが、車間距離が詰まっていると 「すっ、すっ、すすっ」となったりして、「こりゃ、短けぇ」と思ってしまうんです。

 車間距離が空きすぎていると「すっ、すっ、すーっ、すっ」と感じて、「おい、長いじゃないか」と思ってしまうんですね。


 そして、はたと「あ、もう編集は終わったんだっけ」 と気づいて、改めてほっとしてみたり。


 大きな仕事が終わったあとの虚脱感と、車の車間距離が気になって仕方がないのが何日か続きました。 精神異常の一歩手前でした。

 
posted by 赤井田拓弥 at 21:08| Comment(29) | 雑文
この記事へのコメント
貴方様の作品ですか。
私も25年以上前にCD版を購入し、大変お世話になりました。未だにあれ以上のモノはないような気がします。
間違いなく旅行英会話教材の名作です。
Posted by 鈴木和博 at 2012年01月23日 18:11
 鈴木さま コメントありがとうございます。あれは、何日も徹夜をしたりして大変でしたが、楽しい仕事でもありました。いっしょに仕事をした人は10年ほど前に亡くなってしまいましたけど。私は音声のことは、すべてその人に教わったのです。

 今後とも、ブログをぜひごひいきにお願いいたします。
Posted by 赤井田拓弥 at 2012年01月23日 18:33
小林克也のアメリ缶を探していたら辿り着きました。
欲しくて探していますが
もうかえないのでしょうか、
オークションも時々チエックしていますが、
CDはなかなかありせんね

聞き取りアメリ缶とビジネスアメリカンもあるのですね

頑張ってさがしてみます。
Posted by マンゴー at 2012年08月08日 14:55
マンゴーさま
もう20数年前の作品ですからね。たぶんないでしょう。
一か八か、カタログハウスに連絡されてみたらいかがでしょう? カタログハウスの作品です、『小林克也のアメリ缶』は。
Posted by 赤井田拓弥 at 2012年08月08日 15:04
数年前に問い合わせてみたのですが、残念ながらありませんでした。温故知新でも入荷はないそうです。・・・残念ですねえ
Posted by マンゴー at 2012年08月10日 01:18
マンゴーさま

 私のところにも1セットだけあったのですが、10年ほど前にある人に貸したら、返ってきませんでした。本を人に貸すと返ってこないと言いますけど、そうですね。
 今後とも、私のブログをよろしくご支援ください。
Posted by 赤井田拓弥 at 2012年08月10日 09:29
同じくアメリ缶で検索していてたどり着きました。

この教材には本当にお世話になりました。
ありがとうございます。

偶然にも作った方にお礼が言えて、うれしいです。

英語のリズムを身につけることができる本当にいい教材だったのに、後継されていないのが残念です。

Posted by Maki-K at 2012年10月06日 02:26
 コメントありがとうございます。

 三連休で百姓をやっており、オフィスに来て初めてコメントを拝見した次第です。

 このブログでは、どの検索ワードで訪問者が到達されたかが分かるのですが、ほとんど毎日と言ってもいいほど、「小林克也のアメリ缶」の検索ワードがあります。
 制作から25年にもなるのに、今でも探しておられる方が多いんですね。
Posted by 赤井田拓弥 at 2012年10月09日 14:57
たまたま偶然ヒットして、ページを拝見いたしました。
お作りになったご本人のページとは驚きました。私は36歳まで英語が話せませんでしたが「アメリ缶」をきっかけに英会話ができるようになり、アメリカ人の友人ができ、外資企業に転職するまでになりました。この教材との出会いがなかったら、この展開はなかったと思います。・・・と、なんだか通販の使用コメントみたいになってしまいましたが、いずれにせよ大変感謝しています。ありがとうございました。
Posted by douketei at 2013年11月13日 11:00
 douketei さん、コメントありがとうございます。

 英語を学習するきっかけになったと伺い、大変うれしい思いです。

 今後も、このブログをよろしくお願いいたします。
Posted by 赤井田拓弥 at 2013年11月13日 13:34
小林克也のおしゃべりアメリカン ふと兄に譲ってしまったのですが、譲るんじなかったな〜と
何処かで売ってるのかと検索したら、ここに辿りついたのです。いや〜この教材の御陰で昔頃ニューヨークへ旅行に行った時どんなんに楽しかった事でしょう、what's the difference between these two ? 嬉しくてよく使ってました。今でも、あの頃に覚えたフレーズがふとした時に出てきます。本当に楽しい教材で、英語が通じた喜びを教えていただきました。感謝しております。
 
Posted by 森本佳子 at 2014年05月06日 23:11
小林克也のおしゃべりアメリカン兄に譲ってしまったのですが、譲るんじなかったな〜とふと
何処かで売ってるのかと検索したら、ここに辿りついたのです。いや〜この教材の御陰で昔頃ニューヨークへ旅行に行った時どんなんに楽しかった事でしょう、what's the difference between these two ? 嬉しくてよく使ってました。今でも、あの頃に覚えたフレーズがふとした時に出てきます。本当に楽しい教材で、英語が通じた喜びを教えていただきました。感謝しております。
 
Posted by 森本佳子 at 2014年05月06日 23:18
森本さん、コメントありがとうございます。
 私のブログにどういう経緯で訪れてこられたのかを知る「検索ワード」という機能があるのですが、やや毎日に近いくらい「小林克也のアメリ缶」で来られているようです。
 うれしい限りです。今後も、私のブログをご支援ください。
Posted by 赤井田拓弥 at 2014年05月07日 10:33
50代です。カセットテープで購入して聞きました。今もダイジェスト版のような小冊子は持っています。色々な教材を購入しましたが、あの、リズムに乗った英会話がなぜか今でも出てくるのが不思議です。今CD版をまた購入しようかなと検索していたところです。
Posted by マット at 2014年06月22日 11:11
マットさん
 コメントありがとうございます。あのラップの英語は、小林克也さんということから思いつき、スタジオのミキサーさんたちと、リズムメーカーを使った教材ができないかと話し合った結果です。
 そのあと、けっこうマネされましたね。
Posted by 赤井田拓弥 at 2014年06月23日 09:22
四半世紀前に妻が嫁入り道具で持ってきたアメリ缶ですがもっぱら僕がハマってしまい、海外旅行に出かける度に聞き返してました。今回もまた旅行前にとiPhoneに仕込んで再聴していたのですがふと検索してみるとなんと制作者のブログを見つけようとは。最近だとデジタルでなんてことない作業もテープ時代は大変だったのですね。僕も学生時代MTRかじってたのでなんとなく想像つきました。
Posted by bluesman at 2014年11月05日 14:51
bluesmanさん、コメントありがとうございます。たまたま今日も、ある出版社の人とオープンテープの編集の話題になりました。その人は30ちょっと過ぎなのですが、オープンテープが回っている情景を見たことがないそうです。スプライシングテープという名前も知りませんでした。
Posted by 赤井田拓弥 at 2014年11月05日 15:05
僕は来年50になりますが、小学生時代に親戚にもらったオープンリールで遊んでました。逆回転させたり楽しかったのですがあたりが茶色い粉で汚れるので大変でした。
その後バンド始めてからはしばらく「テープエコー」が憧れでしたが、80年代初頭にデジタルディレイが出て買った記憶が。
アメリ缶のドラム音はヤマハのRXシリーズでしょうか?僕はTR派でしたけど当時はRXが主流だったことなど懐かしく思い出しました。
Posted by bluesman at 2014年11月06日 11:56
コメントありがとうございます。ドラム音のことはよく分かりません。当時のスタジオミキサーの人と話をしていて、リズムメーカーで音を入れようということになり、その人が持っていたリズムメーカーを借りたのでした。
 いろいろと音色を変えられたと思います。それで、いくつか試してみて、あの音に落ち着いたというわけです。
Posted by 赤井田拓弥 at 2014年11月06日 12:04
ご返事有り難うございました。今日もアメリ缶聴きながら散歩してきました。1987年でしたらリズムマシンはRX-15(リンク先図)だったのではないかなあなんて勝手に夢想しながら聴くというまた新しい楽しみを発見できました。有り難うございます。
http://jp.yamaha.com/product_archive/music-production/rx15/?mode=enlarge&enlarge_type=color
Posted by bluesman at 2014年11月06日 17:35
 だいぶ昔のことですから、あまり覚えていませんが、こんなような感じだったように思います。大きさはA5かB4くらいでしょうか。
Posted by 赤井田拓弥 at 2014年11月06日 17:42
はじめまして。
学生の頃に聴いていたアメリ缶のフレーズが今でもリズムとともにふと出てきます。
一緒に聴いていた現在70近い親も、大昔に覚えたものを今でも言うことができます。
本当に素晴らしい教材です。
カセット版でしたが、人に譲ってしまったことを後悔しています。
子育てが一段落したのを期に、また聴いてレッスンしたいと思っているのですが・・・。
こんなにもファンがいますし、再販していただければ嬉しいな〜と・・・やはり、無理ですかね(^-^;
Posted by けい at 2015年02月25日 23:13
コメントありがとうございました。
あの教材は、カタログハウスから出ていたんですよ。よくテレビでコマーシャルをしていますよね、「通販生活」って。
あそこに投書してみられたらいかがでしょう? またその気になったりするかもしれませんよ。
Posted by 赤井田拓弥 at 2015年02月26日 09:14
ふと思い出し「アメリ缶」で検索して拝読致しました。そしてラストの「こりゃ、短けぇ」で手を叩いて爆笑してしまいました。あります!その感覚!何か集中しすぎると全く違うところでそのクセが出ますよね。当時それほどまでに極められた、ということでしょう。おつかれさまでした。
「LAのピザのラージはこんなにデカイ」だったか、広告も覚えていますよ。懐かしいです。
Posted by サダナリヒロシ at 2015年07月02日 10:05
サダナリヒロシさん、コメントありがとうございます。

 作ってからもう28年くらいになりますが、未だに話題に上る作品なんですね。いろいろなところで「あの制作者です」と言うと、皆さんビックリされます。
Posted by 赤井田拓弥 at 2015年07月02日 10:19
「手を叩いて爆笑」というのも失礼だったかもしれませんが、まさにその通り!というか。私もデザイン関係の仕事のあとで、駅のホームから街を見て「左側の建物が揃ってないなー。三軒目の壁はもう少し右寄りだなー」などとかなりヤバい状態になったりします。見事な文章に感服しております。
87年でしたか。私は大学生でしたが、1ドル360円が250円を経て150円まで下がり、数十万円していたエアチケットもツアーのバラ売り(らしきもの?)がが出始めて、「雑誌やテレビで見るだけじゃなくて、がんばれば西海岸あたりなら行けるかも」とほのかに思い始めた時期だったかと。その頃の我々の想いにまさにミートしていたのでしょう。感慨深いです…。
Posted by サダナリヒロシ at 2015年07月02日 16:21
 サダナリヒロシさん、ご返信ありがとうございます。
 おっしゃるように、根を詰めて仕事をしたあとは、同じようなことを感じるのでしょうね。それにしても、『小林克也のアメリ缶』の話題でこんなにコメントをいただけるとは思いませんでした。それだけ認知されていたし、使われてもいたのでしょう。制作者として感慨無量です。
Posted by 赤井田拓弥 at 2015年07月02日 16:43
暑い日々が続いています。元気で活躍とのこと,頼もしく思います。
知人からの暑中見舞いで,鹿児島の甑島の呼び方について,その人の主張が書いてありました。
「古来 コシキジマ が普遍的な呼び方なのに コシキシマ と濁音を取るのはけしからん。住人の反対を無視している」との事です。

 わたしは屋久島に赴任直後は 志戸子を シドコと呼ん授業中に大笑いされました。ついでに尾之間を オノマ と呼んでいました。
 濁点の有無は どんな言語も難しいものですね。
 出版業界の雄となるべくTOEIC改訂の仕事に励んでください。
Posted by 川野 達雄 at 2016年07月21日 21:28
川野先生、ご連絡ありがとうございます。土地の名前の読み方は余所から来ると、すぐには分かりませんね。東京でも、すぐに分からずに失敗したこともたくさんあります。
 私は、体調も元に戻り、検査を受けましたが、別に悪いところもなく、ホッとしています。
 この暑いのに、もうすぐ冬野菜の準備です。百姓は忙しいのです。
Posted by 赤井田拓弥 at 2016年07月22日 09:26
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